ランチャーアプリを使いこなす 前編 ランチャーアプリRaycastの基本機能
無料で使い勝手のよいランチャーアプリ、Raycastを紹介します。macOSには標準のものも含めてさまざまなランチャーアプリがありますが、Raycastはフロントエンド・エンジニアにとってうれしい特徴を備えています。
はじめに
このシリーズでは、ランチャーアプリの1つであるRaycast(レイキャスト)について紹介します。
*注:対応OSについて
2022年4月現在、RaycastはmacOSのみの提供となるため、他のOSで利用することができません。予めご了承ください。
ランチャーアプリとは、キーボード操作ですばやく特定のアプリケーションを起動したりファイルを開いたりするなど、作業効率を上げるためのアプリです。その他にも設定やカスタマイズでさまざまな操作をすることができます。
有名なランチャーアプリとしては、以下のものがあります。
- Spotlight(macOSに標準でインストールされている)
- Alfred
- Quicksilver
すでにいくつかのランチャーアプリがあるのに、わざわざ新たにRaycastを紹介するのはRaycastがWebエンジニア向け、さらに言えばフロントエンド・エンジニア向けの特徴を備えているためです。
主な特徴とは次のようなものです。
- GitHub、Slackなどの開発者向けサービスの拡張機能が豊富
- 拡張機能はTypeScript + Reactで開発
Raycastの導入
それではRaycastをインストールして、実際にどのようなことができるのかを紹介していきます。まずは、Raycastのトップページから、アプリをダウンロードしインストールします。
*注:無償と有償のプランについて
Raycastの利用は基本的に無償のプラン(Personal)で問題ありません。有償版ではチームで設定などを共有する機能が提供されます。チーム機能は2022年4月28日現在では「Early Access」状態です。
Raycastの基本的な使い方
Raycastは、デフォルトではoption
+Space
で開きます。Raycastには次のような2種類の使い方があります。
- OSにインストールされているアプリケーションを起動する
- Raycastの機能を使用する
Raycastを開くショートカット
これまでmacOS標準のSpotlightを開くショートカット(command
+Space
)に慣れている人は、Raycastのショートカットキーを同じものに変更できます。
RaycastでGeneral
と入力して、Raycast Preferencesの「General」タブを表示させると、ショートカットキーをcommand
+Space
に変更できます。
その際、変更後のRaycastのキー操作とSpotlightとのキー操作の重複を避けるため「システム環境設定 > キーボード > ショートカット」でSpotlightのショートカットキー設定をOFFにする必要もあります。
公式ドキュメントではランチャーアプリのショートカットは常に1つだけのほうが覚えやすいとの趣旨から、起動のショートカットを変更することが推奨されています。
OSにインストールされているアプリケーションを起動する
1つ目のアプリケーションを起動する機能は、ランチャーアプリではお馴染みの機能です。Raycastを起動したら、アプリケーション名を入力していけばサジェストされるので、選択してEnter
を押せば起動できます。
Raycastの機能を使用する
2つ目のRaycastの機能は、たとえば下記のような機能があります。拡張機能をインストールすることで機能をさらに増やすことも、もちろん可能です。
- ファイル検索(
File Search
) - ブラウザによる検索(
Search Chrome
) - ウインドウ管理(
Window Management
) - クリップボード履歴(
Clipboard History
) - スニペット(
Snippets
) - フローティングノート(
Floating Notes
)
どのような機能があるのかはExtensions
で確認できます。Raycastからextensions
と入力して選択してみましょう。
下記のような機能一覧のウインドウが表示されるはずです。
ここに列挙されている機能のスペルを打ち込んでいけばサジェストされるので、あとは選択してEnter
キーを押すことでその機能を利用できます。(例:File Search
)
ただし、機能名のスペルをわざわざ入力するのは面倒です。機能名の単語の頭文字でもサジェストされるので、そちらを利用するのがよいでしょう。たとえばFile Search
はfs
になります。
- 機能名から探す場合:
File Search
- 省略した名称で探す場合:
fs
また、機能によっては1ステップで目的を果たすものと、2ステップで目的を果たすものが存在します。
- 2ステップ:機能を決定し、次にその機能の「アクション」を実行する
- 例:
File Search
、Snippets
- 例:
- 1ステップ:機能を選択した段階で処理が実行される
- 例:
Window Management
、Floating Notes
- 例:
次はここに挙げたうちのいくつかの機能を詳しく紹介します。いずれも、Raycastインストール後にすぐに使える機能です。
すぐに使用できるRaycastの機能
基本的な使い方を理解したら、次はRaycastのインストール後にすぐに使える組み込みの機能を紹介します。
また、説明の便宜上、最初にoption
+Space
を入力してRaycastを呼び出すという最初の操作は予め行われている前提とします。
ファイル検索
ファイル検索はランチャーアプリでお馴染みの機能です。これは先ほどの説明した「2ステップを必要とする」機能になります。まずは、fs
やfile search
と入力するとFile Search
がサジェストされるのでEnter
で選択します。
環境によってはfs
でFax Settings
などが一番にサジェストされますが、右端に「System Preference」「Command」など種類が表示されます。「Command」表示を目印に選択するとよいでしょう。
RaycastがFile Search機能の状態に切り替わるので、ファイルやディレクトリの名前を入力して目的のものを探します。ファイル名を選択すると、同時にファイルの内容(テキストや画像のサムネール)なども表示されるのが便利です。
目的のものを選んでEnter
を押せば、そのファイルまたはディレクトリが開きます。
*注:ファイルアクセスの許可について
初回の実行では特定のフォルダへのアクセス許可を求められるので許可してください。
後から変更する場合は、macOSの「システム環境設定 > セキュリティとプライバイシー > プライバシー > ファイルとフォルダ」の項目にRaycastが追加されているので、そのチェックを入れたり外したりすることで変更できます。
File Search機能を解除したい場合は、esc
キー押下で前の機能選択の状態に戻すことができます。入力欄が空の状態からBackSpace
でも戻れます。
別のアクションを実行する
Enter
で「ファイル(ディレクトリ)を開く」というのは、ある1つの「アクション」を実行したということになります。その他に、たとえば次のようなアクションが用意されています。
- ファイルをコピーする
- ファイル名をコピーする
- そのファイルが格納されているディレクトリを開く
- その他…
それでは別のアクションを実行してみましょう。対象のファイルを選択したら、画面右下のOpen
と表示されているUIの>_
にカーソルをあててみると、More actions
とショートカットキーであるcommand
+K
が表示されます。
せっかくランチャーアプリでキーボードのみの操作しているので、ここではcommand
+ K
で別のアクションを開いてみましょう。
command
+ K
(あるいはMore actions
をクリック)でメニューを開いてみると、アクションとそのショートカットキー一覧が表示されます。
よく使うアクションがあればショートカットキーを覚えておくとよいでしょう。
Window Management
Window Managementは現在フォーカスされているウインドウを特定の大きさ・特定の位置に配置することができる機能です。これは1ステップで完結する機能になります。たとえば、現在のフォーカスされているウインドウを左半分に表示したい場合は次のように入力します。
left
(またはhalf
など)と入力する- サジェストされた中から
Left Half
を選択する - フォーカスしていたウインドウが画面の左半分にリサイズ・配置される
*注:Window Managementの許可について
Window Managementを有効にするためには、「アクセシビリティ」でRaycast.appのコンピュータ制御を許可する必要があります。
下の画像のように、サジェスト一覧のアイコンがウインドウがどのようになるかを表しているのでわかりやすいかと思います。
目的のものを選択すれば、フォーカスがあたっていたウインドウがその大きさ・配置になります。
位置とサイズそれぞれにどのような定義があるのかを把握しておくとよいでしょう。その位置とサイズを組み合わせることで使いこなせるはずです。
- 位置:
Top
、Right
、Bottom
、Left
、Center
など - サイズ:
Maximize
、Half
、Third
(3等分)、Fourth
(4等分)など
詳しくは公式のWindow Managementのページを参照してください。
ウインドウサイズを微調整する
ウインドウを少しだけ大きくしたい、小さくしたいというユーザー向けにMake Larger
、Make Smaller
が用意されています。ただし、微調整にわざわざこれをRaycastに打ち込んで利用するのは不便なため、ホットキーを割り当てることをおすすめします。
RaycastのPreferencesを開き、「Extensions」タブからMake Larger
とMake Smaller
を探して、それぞれ任意のホットキーを割り当てることで、ショートカットキーのようにして使用できるようになります。
Quicklinks
次は、ここまでに紹介してきた機能とは少し趣旨が異なるQuicklinks機能を紹介します。特定のサイトのURLをベースに自分でRaycastを手軽に拡張できる機能です。
たとえば、CodeGridには検索ページがありますが、ここで検索するキーワードをRaycastから指定しつつ、即座に検索結果のページを開けるようになります。このCodeGridの記事検索を例に実際に設定する手順を紹介します。
Create Quicklink
(またはcq
)と打ち込んで、この機能を選択してください。表示された入力欄には次のように入力します。
- Name:
CodeGrid
- Link:
https://www.codegrid.net/search/?query={Query}
Linkの{Query}
の部分が入力されるキーワードに相当します。右下のCreate Quicklink
ボタン、またはショートカットキーのcommand
+Enter
でCodeGrid検索のQuicklinkの作成を確定します。
CodeGrid
またはcg
と入力すると、さきほど作成したCodeGridの機能がサジェストされるようになります。右端の種類は「Quicklink」になっていますね。Enter
を押して確定すると、隣の入力欄にカーソルが移動するので検索したいキーワードを入力してEnter
を押すと、CodeGridの検索結果ページを即座に開くことが確認できます。
この追加したCodeGrid
の機能は、先ほど紹介したファイル検索の機能のように「別のアクション」で編集したり、このQuicklinkを削除することが可能です。
その他の機能
ここで紹介したもの以外にも、さまざまな機能が用意されています。興味をひくものがあれば、機能名を入力して調べてみてください。
- クリップボード履歴(
Clipboard History
) - スニペット(
Snippets
) - 一時的なメモ書き用ノート(
Floating Notes
) - Macの辞書と連携(
Define Word
) - Macのカレンダーアプリと連携(
My Schedule
) - Macのリマインダーと連携(
My Reminder
) - 計算式を直接入力することで計算が可能
まとめ
Raycastの導入から基本的な使い方、最初から組込まれているいくつかの機能について紹介しました。次回はGitHubやSlackなどのメジャーな開発サービスと連携する拡張機能について紹介します。